日曜日の日帰り旅行、親睦委員会並びに職業奉仕委員会の皆様、ありがとうございました。
11月22日は「小雪(しょうせつ)」でした。北風の冷たさが、日々はっきりと感じられるようになります。北国では里にも雪がちらつくことがありますが、まだ本格的な寒さにはいたりません。ちょっとした雪、の意としての「小雪」です。
11月22日〜11月26日は「小雪」の初候である「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」です。昼の時間が短くなり、陽射しもめっきりと衰えて、どんよりとした曇りがちの日も多くなります。ねずみ色の空を見上げながら、ふと、虹を見る日もほとんどなくなったと思う、そんな季節感を表しているのが、この言葉。いっぽうで、俳句の季語に「冬の虹」という言葉もあるのですが、こちらは、寒々とした雨が上がった晴れ間に、ひょっと珍しいものに出会った、そんな新鮮さを含む響きを持っています。
11月27日〜12月1日は「小雪」の次候である「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」です。毎日少しずつ存在感を増してきた北風が、木々の枝から枯葉をすっかり吹き飛ばしてしまいます。風が吹き止んだときにふと現れる、寒々と枯れ果てた景色に、不完全なものへの美を見いだすことも、日本人が育てた大切な感性のひとつと言えるでしょう。「枯れ、冷える」ことをやがては「わび」、「さび」の世界へと昇華させていったいにしえの茶人の世界に思いを馳せてみたい季節です。
「恩送り(おんおくり)」という言葉があります。「恩返し」ではなく、もらった恩を他の人に返すという意味です。誰かから受けた恩を、自分は別の人に送る。そしてその送られた人がさらに別の人に渡す。そうして「恩」が世の中をぐるぐる回ってゆくということです。
「恩送り」では、親切をしてくれた当人へ親切を返そうにも適切な方法が無い場合にも有効です。第三者へと恩を「送る」場合、恩を返す相手が限定されず、比較的短い期間で善意を具体化することができる点からも、社会に正の連鎖が起き易くなります。
また、「恩送り」と意味が相当程度に重なる別の表現が古くから日本人にはしっかり定着しています。「情けは人の為ならず」という言葉です。「情けは人の為ならず」とは「情け(=親切)は、いずれは巡り巡って(他でもない)自分に良いことが返ってくる(だから、ひとに親切にしておいた方が良い)」という意味の表現です。
「恩送り」や「情けは人のためならず」といったモラル・常識は、各地の人間社会が古くから持っている良識のひとつです。類似した考え方は、日本以外の国々、様々な国・共同体にも見られます。
英語ではA kindness is never lost(親切は決して失われないので実行しよう)と表現しています。これは「情けは人のためならず」と同じ考え方ですね。現代では人々が、こうした良識やモラルを忘れがちになっています。そのような状況の中、近年、英語圏では「恩送り」に相当する概念が、Pay
it forward(ペイ・イット・フォーワード)の表現で再認識されるようになってきました。
この"Pay it forward"をテーマに小説『ペイ・フォワード 可能の王国』が書かれ、この本のアイディアをもとにペイ・イット・フォーワード財団が設立されました。この財団は学校の生徒、親、教師に、このPay
it forwardの考え方を広める活動をしています。
しかし、施しを与えることは時により非常に難しいことでもあります。人に施しを与えることは、時として相手の尊厳を傷つけることがあります。。また、施しを受ける側も施しに甘えたり慣れたりしてしまったら自己の誇りを失い人間失格にもつながります。
2015年の5月17日の産経新聞にあった記事ですが、イタリアのミラノで毎晩500人の困窮者に食事を提供するレストランがります。困窮者に提供する食事といっても、パンとデザートはもちろんのこと1皿目はパスタやリゾットなど2種類から選べますし、2皿目も肉や魚など3種類から選べるちゃんとした食事です。
貧しい人なら誰でも入れるわけではなく、教会や慈善団体などの推薦に基づき、理由の確かな失業者や困窮者だけが2カ月間有効の入場パスをもらえます。しかも、困った人のためのレストランとはいえ、タダではなく、必ず1ユーロ(約135円)払わなければならないという特徴があります。
これは、「自分は現在は困っているが恵んでもらっているのではなく、お金を払って食事をしているのだ」という自尊心を持たせるためだといいます。こういった工夫も大事なことだと思います。
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